以前「一眼レフ編」の記事を掲載しましたが、今回はレンジファインダーカメラ編です。
レンジファインダー、つまり距離計を搭載し、実像と虚像とのズレを合わせることでピントを合わせるいわゆる「二重像合致式」という方式を採用したカメラです。
ものすごく大雑把に言ってしまうと
「ダブって見える被写体を重ねて合わせることでピントを合わせる」
ということでイメージしていただけたらと思います。
例えばレンズ交換式のレンジファインダーカメラといえばライカが代表的ですね。
一眼レフとの違いはなんといってもコンパクトなシステムでしょうか。
ボディもさることながら、レンズも一眼レフ用と比べてかなり小型に作れるレンジファインダー機は機動力にも秀でています。
そしてレンズ越しに直接視認する一眼レフカメラと違い、レンズと独立した位置にあるファインダーも特徴です。
ファインダー自体が素通しのガラスのため、f値の暗いレンズを装着しても視界はクリアなまま構図と向き合うことが出来ます。
カメラ内にレンズを通して直接覗くためのミラーがありません。
このことがシャッターを切った時の「ミラーショック」や「ブラックアウト」の無い静音性に優れたコンパクトなカメラシステムのため、スナップを主体とするストリートフォトグラファーなどから絶大な人気を誇ってきました。
また広角レンズとも相性がよく、構図用に外付けのフレームファインダーが必要な場合もありますが、距離計連動によって比較的精度の高いピント合わせが可能なのも、街撮りメインの方に人気な理由となっています。
まさに刹那を切り抜くのにうってつけのカメラです。
ですが長所ばかりでなく、短所もしっかりあります。
まずは、パララックスと言われる“視差”です。
ファインダーとレンズの位置が離れているため、近い距離の被写体を撮ろうとした場合構図が切れてしまったり、ズレてしまう可能性があります。
(カメラによっては「パララックス自動補正」が装備されている機種もあります。)
続いて、一眼レフ機と違い最短撮影距離が長いです。
レンジファインダーカメラに搭載されている距離計はその機構上、約0.7m~1mほどまでしか連動してくれません。
それよりも近くを撮影できる機能を持つレンズも存在しますが、専用のアタッチメントがない場合は基本的に「目測」での撮影になり、なかなかのイバラの道です。
そして、広角側が得意と上述しましたが、逆に望遠側での撮影が苦手です。
ファインダー自体が素通しガラスのためレンズを通して直接見れないので、ファインダーとフレーム(撮影範囲の枠)に一定の限界があります。
例えば135mmレンズを使おうとした場合、撮影範囲がかなり狭くなり、フレームも小さくなってしまいます。
その枠内に収めるために慣れが必要かもしれません。
望遠側レンズ、接写での撮影を楽しみたい方は一眼レフの方が適しているかもしれません。
最後に、撮影の際ファインダーからはボケ具合をイメージしづらい、というものがあります。
直接レンズ越しに確認できる一眼レフとは違い、前後のボケを確認できないため撮影者で予測する必要が出てきます。
しかし、この部分は使い続けていくことによってある程度慣れていくところなのかなあと思います。
とはいえこれら短所とは比較にならない程のポテンシャルを秘めているレンジファインダーカメラ。
今もライカが新品で販売されていることからも世界的な支持を受けているのは明白です。
アンリ・カルティエ=ブレッソン氏や木村伊兵衛氏といったスナップの神様が愛してきたレンジファインダーカメラの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?
【おまけ】
これからレンジファインダー機を始めたい方に、レンズ交換可能な機種で比較的おすすめなモデルを何種類かご案内します。
購入の際にお役に立てれば幸いです。
・ライカⅢf
M型ライカの登場までは、この通称“バルナック・ライカ”と言われるタイプがライカのカメラでした。
フィルムの装填やピントの合わせ方など、少々お作法がありますが、M型ライカよりも小型&軽量で精密な機械を操る醍醐味を味わえます。
特にモデルⅢfはバルナック型の完成形と言われるほどの逸品です。
ファインダーは50㎜しか対応していないものの、国内外のL39マウントレンズを楽しめます。
1枚1枚を焦らずじっくり撮りたい方にも。
・ライカM4
究極のレンジファインダーカメラと名高いM型ライカの内でもバランスの良いM4は、フィルム装填が落とし込み方式になったり巻き戻しクランクの搭載など運用面の快適性が抜群に向上し、人気の一台です。
35mmのフレームが搭載されたためズマロン35㎜やズミクロン35㎜などをお供にスナップ撮影にもおすすめのモデルです。
・ライカM6
言わずと知れたM型ライカのベストセラーモデル。上記のM4に露出計を搭載し、さらに28㎜フレームが追加されたことで向かうところ敵なしに。
一方で、真鍮製から亜鉛合金製に変わったトップカバーや、ファインダー反射防止材のオミットなど、どこか今までのライカと質感が変わった様な印象を受ける方もいらっしゃる様。
ですが、写真機として非常に優れた操作感で実用機としてこれ以上の選択は無いかもしれませんよ。
※2022年発売の復刻版はトップカバーが真鍮に変更されています。
・ライツミノルタCL(ライカCL)
ドイツのライツ社と日本のミノルタ社が手を組んで完成させた、Mマウントのコンパクトボディです。
レンズとの相性や操作感などそれまでのM型ライカに比べ独特ですが、考えられたデザインはとても取り回しやすく抜群の機動力を持っています。
兄弟機のミノルタCLEと共に近年再評価されているみたいですね。
※経年劣化により内蔵露出計の調子が悪い個体が多くなっています。割り切ったうえでのお求めが精神衛生上よろしいかもしれません。
・ニコンS3
今も第一線で活躍している日本メーカーの雄、ニコンからS3です。
1959年にニコンFが生まれるまで、日本光学もレンジファインダー機を製造していました。搭載されたニッコールレンズのシャープな写りは当時の新聞記者の目となっていたのです。
卵型のフォルムのライカに対して角型の武骨なデザインのニコンS型。35㎜、50㎜、105㎜に対応したフレームのおかげで使いやすさは抜群です。
ファインダーの見えやフィルム装填など少しクセがありますが、今なおニッコールの描写を見れば惚れ惚れしてしまいます。
ニコンFユーザーの方でしたら、意外とすんなり扱えるかも…?
・フジカGW690Ⅲ
ちょっと番外編ですが、いわゆる中判カメラにももちろんレンジファインダーカメラがあります。
中でもマミヤ7・プラウベルマキナ67に並んで人気なのが、この富士写真フイルムのGW690です。
6×9判の大迫力フォーマットを楽しめるカメラで、「テキサスライカ」の異名があるほど。
扱い方も非常にシンプルで、M型ライカを使ったことのある方はすぐ慣れるかもしれません。
ライカM4とツーショット。同じフジフイルムの中判ミラーレス一眼「GFX」よりも少し大きいです。
今回ご紹介したモデルはM6(とCL)を除き露出計が搭載されていない機種です。
なので、初めての購入をお考えの方は外付け露出計を合わせて買うか、スマートフォンの露出計アプリをインストールしておくと安心ですね。
またレンジファインダー機を含め、カメラはとても精密な機構です。
出来るだけ店舗で整備された、保証が付いている個体を選んでもらうのが長く使っていただけるポイントかと思います。
貴方にとって素敵なカメラと出会う手助けになれば幸いです。