銀幕の小さな部屋20巻目 「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

映画に出てくるカメラにスポットを当てたこのシリーズ、いつの間にやら今回で20回目です。
今回は分断されたアメリカという衝撃的な世界を記者の視点で描く話題作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」です。

【あらすじ】
“3期目”の当選を目指すアメリカ大統領。その強権的な手法に反発を示し、19の州が離脱をしてしまう。
テキサス・カリフォルニアの2州からなる“西部勢力”が着々と政府軍の守るワシントンD.Cを包囲していく。
そのころ、ベテランジャーナリストのリーはデモの暴動の中、駆け出しのフォトグラファーのジェシーを助ける。
縁を感じたジェシーは取材のためワシントンD.Cを目指すリー達一行についていこうとするが…

映画「シビル・ウォー」より。

あのアメリカ合衆国が分断されるという衝撃的なストーリーと、情勢に翻弄されながらも使命を果たそうとする4人のジャーナリスト達の濃厚なヒューマンドラマが展開されます。
監督は「エクス・マキナ」でアカデミー賞を受賞したアレックス・ガーランド。
揺るぎない信念の持ち主、リー・スミス役に「メランコリア」「マリーアントワネット」のキルステン・ダンスト、
若手駆け出し中のジェシー役に「エイリアン ロムルス」での活躍が話題のケイリー・スピーニー。
「DUNE 砂の惑星」のスティーヴン・ヘンダーソンなどが脇を固めます。

さて、今作は報道ジャーナリストが主人公の物語。
冒頭からリー・スミスはミラーレス一眼を駆使し目の前の光景を収めていきます。銘板に黒テープを貼っていますが、左正面に“α7R”の刻印が。高画素モデルのα7Rシリーズのようです。
レンズは…ソニーの白レンズ、黒字の“G”に見えますのでFE70-200/F4G OSSでしょうかね。
単焦点レンズの方は、どうやらマウントアダプター経由でMFレンズを使っているみたいですね。
ネットの海をさまよってみると、どうやら「ズミクロンM 35/2 ASPH.」を使用しているみたいです。
(※画像は無いです、すみません…)

そして今回ピックアップするのは、ジェシーの愛用カメラです。

映画「シビル・ウォー」より

劇中でも機種名を話すセリフが出てきますが、「ニコン FE2」を使っていますね。
レンズはAi 24/2.8Sのようです。

劇中ではこのFE2にAi24/2.8Sを使用しています。

ニコンFEの後継機として1983年に生まれた電子式MF一眼レフです。
小型・軽量ながら最高速1/4000のシャッターと絞り優先AEが搭載された一眼レフとしてプロにも愛用者のいる名機として名を馳せました。

シャッター速はMAX1/4000と大幅にアップ。また緊急時の機械式シャッターはBと1/250です。
露出補正が1/2ステップから1/3ステップに。より精細な補正ができるようになりました。※FEとダイヤルの調整方式が逆になっているので注意!
バッテリーチェック用のレバーが廃止され、シャッターボタン半押しで確認するスタイルに。
ニコンFE2では露出計連動レバーが上げられなくなりました。旧式のオートニッコールやニューニッコールレンズはAi改造を施していないと使用できません。

【まとめ】
包み隠さぬ演出でとてもシリアスな展開に非常に引き込まれてしまう109分でした。
よくあるドンパチ映画ではなくあくまでジャーナリストの道中を淡々と描いた物語で、全編派手なアクションシーンを想像して見に行くと面食らってしまうかもしれません。
平和というものがいかに糸一本の均衡の上で成り立っているのか、改めて考えさせられました。
個人的にはアメリカ人の種族を問うサングラスのキャラ(リー役のダンストのリアル旦那様!)がとても生々しくて怖かったですね。
また常に緊張感で張りつめているわけではなく、劇中に現像シーンやスマホでスキャニングするシーンがあったりと、ニコンファンのみならずフィルムカメラファンもニヤリとしてしまう場面があり作中の息抜きに一役買っています。
真実と現実を世界に伝えるジャーナリズムを抱いたロードムービー。
フィクションだけの世界ではないのかもしれません。

出典:シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024年)
監督:アレックス・ガーランド
出演:キルスティン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー…etc