一眼レフ、レンジファインダー機とカメラの種類を簡単にご紹介してきました。
今回はレンズの中にシャッターが組み込まれている「レンズシャッターカメラ」のお話です。
レンズシャッターは非常に広い範囲で採用されており、GRに代表されるようなコンパクトカメラからローライフレックスのような二眼レフカメラ、果てはコピー用紙みたいなサイズのフィルムを扱う大判カメラまで多岐に渡っています。
一眼レフやレンジファインダーカメラは一般的にフィルムの直前に二枚構成のシャッター幕があり、レリーズボタンを押すと先の幕が走り、続けて後ろの幕が追いかけます。シャッター速度によって両者の隙間の大きさが変わり、フィルムに当たる光量を調整します。
この機構を備えたシャッターをフォーカルプレーンシャッターとも呼びます。
対してレンズシャッター機はその名のごとく、レンズ内にシャッターを備えます。
レンズの周りに緻密なシャッター機構を張り巡らせて、2枚から3枚のシャッター羽根を組み込みます。
シャッターボタンを押すとこの羽根が全開し、フィルムに光を当てます。
さて、このレンズシャッターカメラ。
その特徴はシャッターの静音性とレリーズ時の衝撃の少なさだと思います。
レンズシャッター機には勢いよく作動するシャッター幕もミラーもありません。
手元に来る衝撃は非常に少なく、静かなシャッター音は撮影者にも届きにくい時も。
そのため、フォーカルプレーン式カメラでは苦手とされる手持ちでのスローシャッターの撮影がしやすいというメリットがあります。
そして、レンズ内にシャッターを収めることが出来るのでコンパクト化を図ることが出来ます。
もちろん短所も。
まずシャッターの機構上、シャッタースピードの高速化が難しいです。
数機種を除いて最高速が1/500、時代が古ければ古いほど、また廉価モデルでも最高速が遅く設計されていることが多いです。(当時としては最高速だったこともありますが…)
日中絞りを開けて撮りたい方や一瞬を切り取りたい方はフィルムの種類などをよく吟味して運用していく必要が出てくるかもしれません。
続いて
ほとんどの機種がレンズ交換できない、です。
レンズにシャッターが入っているのでほとんどのモデルがレンズを交換できないため、カメラに搭載されたレンズのみで撮影を行います。
中にはレンズの前半分だけ交換できる機種もありますが、交換レンズを探すのはかなり骨が折れるかもしれません。
こういった点からレンズシャッター機は“レンジファインダーカメラ”のシステムを組んでいるモデルが多い印象です。
といった様なデメリットがありますが、普段カメラを標準域のレンズでシャッター速1/250付近で撮影している方にとってはほぼ心配は無用かと思います。
(だいたい晴れの日の屋外でISO100のフィルムを使う場合は1/250、f8の設定が多い気がします。)
時にライカにも迫るサイレントシューターのポテンシャルを秘めるレンズシャッターカメラ。
いわゆる家庭用の普及機もいっぱい登場していたので、比較的お求めやすい価格帯の個体にも出会えやすいと思います。
【おまけ】
最後に、何台かレンズシャッターカメラをご紹介。
・コニカ C35(フラッシュマチック)
コニカが1968年に発売したコンパクトカメラです。電池で動く電子シャッター式で、撮影者はピントを合わせるだけで、シャッター速度や絞りはカメラが設定してくれるプログラムカメラです。
画像は後年のモデル「C35フラッシュマチック」ですがサイズ・重量は同一で、その機動力の高さから“ジャーニー・コニカ”の愛称があります。
レンジファインダー機構を搭載しているので、自分でピントを合わせている実感を得られます。
・ローライ35(画像はローライ35クラシック)
35㎜フィルムカメラを極限まで小型化したカメラです。ピントが厳密に合わせにくい目測式なのと、少しお作法が必要ですが、その愛くるしい見た目と非常に優れた描写から全種コレクションしている熱狂的なファンもいるカメラ。
電池は露出計のみ必要なので、もし電池切れを起こしても撮影は続けられる実力派です。
・ローライフレックス(2.8GX)
二眼レフの王様、ローライフレックスからもご紹介。1987年に発売された最後期機種です。
露出計やTTLストロボも使用可能なモダンなつくり。その分重量が増えていますが、プラナー2.8の圧倒的な画を見てしまうと、思わず持ち出さずにはいられなくなってしまうかも?
GXはかなり高価で、露出計の無いモデルならローライフレックスMX(f3.5)なども扱いやすくておすすめです。
・ローライコードVb
ローライから二眼レフをもう一台。高級機ローライフレックスとは違い普及機としてラインナップされているローライコードシリーズ。
フィルム巻き上げ&シャッターがクランクではなくレンズ下のレバーになっていたり、機種により距離計ノブが右についていたりと何タイプかありますが、画作りの実力は紛れもなくローライ。
こちらの操作法が扱いやすいというユーザーも決して少なくありません。
・フジカ GW690
中判カメラからもう一台。遠足の出張カメラマンご愛用だった大迫力の6×9判で写真を撮れるカメラです。
操作系がライカに似ていることから“テキサスライカ”の異名もあるとか。
1本のフィルムに対して8枚しか撮影できませんが、35㎜フィルムとは比べ物にならない密度の写真を楽しめます。
・フジフイルム GA645
AFの6×4.5判カメラです。少し相場はお高めですがファインダー内LED表示にズーム機能も付いた便利カメラで、中判入門機としても最適かと。
中判(120)フィルムの中では最小フォーマットですが、それでも35㎜フィルムの4倍近くの面積を持つので1本16枚の階調豊かな写りを楽しめます。
と6台ほどご紹介しましたが、正直この記事では載せきれないほどのメーカー・機種が存在します。
レンジシャッターカメラは爆発的に普及したタイプのカメラで、同一機種でもコンディションの程度は千差万別。
出来るだけキチンと整備され、保証が付いているものを選んでいただきたいです。
バシャッとシャッター音で目立つのが苦手な方にも、慎ましやかなカメラを旅のお供にいかがでしょう?