【初心者向け】これからフィルムカメラを始める方へ ~ハーフカメラ編~

「フィルムカメラを始めたいけど、最近フィルム代も高いし…」と躊躇ってらっしゃる方にも、今フィルムカメラをお持ちの方のサブ機にもおすすめできるのが、ハーフカメラです。

このハーフカメラ、通常撮影で1コマ使用するところ、2分割して倍数撮影できるようにしたカメラです。
そのため、36枚撮りのフィルムを装填した場合は72枚撮れてしまう夢のようなカメラです。

ハーフカメラ(左)と35㎜カメラ(右)。フルサイズに比べ、撮像面が半分覆われているのがわかりますね。同じフィルムを使うカメラでもここまで雰囲気が違います。

そもそもハーフ判とは。
スチル写真を撮る一般的な35mmフィルムは1コマ“24㎜×36㎜”のサイズでフィルムに記録されます。
それをハーフカメラでは“24㎜×18㎜”と半分にすることで倍数撮影できる仕様になっています。
実はこの規格は映画用フィルムのコマサイズと同じで、通称“シネ判”とも呼ばれます。
先祖返りといったところでしょうか。
レンズや投射機のサイズはもちろん違いますが、ハーフ判のコマで映画館の大スクリーンサイズに引き伸ばせるのは驚きですね。

何度も活躍してくれているサンプルフィルムくん。上がハーフ判、下がフルサイズです。
こちらは映画フィルムと比較。左が映画用フィルム(1984年版ゴジラ)、右が写真フィルムです。ほぼ同サイズなのが分かりますね。

ハーフカメラが登場した当時はフィルムのクオリティが今より良くなく、分割して大きく引き伸ばした写真は粒子が粗かったと聞きますが、近年のフィルムの品質向上によってかなり綺麗な画作りが可能になっています。
粒子の少し粗い感じがフルサイズ判とはまた違った雰囲気で、むしろノスタルジックな被写体にピッタリです。

photo: Olympus PEN-D

ハーフカメラの特徴はなんといっても縦構図がデフォルトなところです。
これは通常長方形のコマを2分割するためですが、これが今ではスマートフォンのカメラを使う方には馴染みやすいようで、むしろ構図をすんなり活かせる方も少なくないのだとか。
また、1コマを分割する都合上、データスキャンした場合2コマで1コマ分のデータになることがあります
そのため、2枚で1つのストーリーを作る組写真として楽しむこともできます。

ハーフカメラで撮影したフィルム。可愛らしいサイズの画像が72コマ並びます。

デメリットと言ってしまって良いのかは微妙ですが、
・最大72枚という枚数のため撮り終わるのに非常に時間が掛かるのが長所であり短所です。
次に、
1m以内の被写体は基本的にボケボケになっちゃいます。テーブルフォトは厳しいでしょう。
撮影の際は距離感に余裕をもって行いましょう。
そして、
・ピントを細かく調整できるカメラが限られているため、ボケを活かした写真を撮るのは苦手のようです。
固定焦点のカメラは、前述の特性を利用して近距離に目的外の被写体を入れると前ボケとして使えたりします。

以前の記事「レンジファインダー編」や「レンズシャッター編」にも言えることですが、
ファインダーがレンズを介してない素通しガラスのモデルが多いため、レンズのキャップを外し忘れていたり、レンズに指が掛かっているのを気づかずに撮っちゃったりする危険性があるので注意しましょう。

【おまけ】
最後にいつものハーフカメラ紹介を何点か。

キヤノン DEMI
キヤノン初のハーフカメラです。
ピント合わせは目測ですが、ダイヤルに目安のイラストがあるのでイメージしやすいかと思います。
カメラ上部の指針に合わせてシャッター速ダイヤルを設定していくスタイルで、比較的扱いやすいモデルです。
フィルム室のモルト(遮光材)が劣化してボロボロになる持病がありますが、キチンと整備された個体は今でも活躍してくれるでしょう。
愛くるしいルックスとデミ(イタリア語で“半分”の意)のネーミングが素敵です。

・「オリンパス ペン EE-3
米谷美久氏が産んだ伝説のオリンパスPEN。
60年代に空前のハーフカメラブームを起こしたシリーズから扱いやすいEE-3をピックアップ。
当時から難しかった露出の設定をカメラが行ってくれるEEを搭載。
またほぼパンフォーカスになるためピントの失敗も少なく、搭載されたズイコーレンズの写りの良さから爆発的ヒット。
特に最終のEE-3は今もフィルムカメラ入門機の1つとしておススメのカメラです。
被写体が暗すぎると判断したら、警告とシャッターロックが掛かる通称“赤ベロ”がとても可愛らしい1台です。

・「オリンパス PEN-FT
オリンパスが作り出した、世界初のハーフ一眼レフカメラです。
小型なボディにスッキリとしたフォルム。
豊富な交換レンズにより、ハーフ判でもしっかりとピントを合わせボケを活かした画作りが容易に。
初代PEN-Fのフィルム巻き上げを1ストロークにしたこととセルフタイマー&露出計を搭載したモデルで、今でもファンの熱い支持を受けているモデルです。
スタイリッシュなボディから響き渡る「ガシャッ」というシャッター音は、いかにも写真を撮影しているという気分にさせてくれます。

・「PENTAX 17
令和に発売されたフィルムカメラとして大きな話題となったカメラです。
電子式シャッター機で、6つの距離を選べるゾーンフォーカス方式。
オート設定やフラッシュの有無など上部のダイヤルで切り替えられる仕様で直感的に操作できます。
見た目の印象よりかなり軽量で、気軽に現代のフィルムの写りを楽しむことが出来ます。
ハーフ判であることの“17”というナンバリング…海を渡って歴史的記録を量産している野球選手と通じるものがあるようなないような。

昨今のフィルム事情も合わさってハーフカメラが再評価されています。
フラッグシップカメラのように仰々しくない小型カメラで何気ない日々を焼き付けてみてはいかがでしょう?