背中で語る実力者レンズ「ライカ ズマリットM 35㎜ f2.5」

世界的に人気のあるライカのレンズ。中でも焦点距離35㎜はとても使いやすく、ズミクロンやズミルックス、ズマロンといった名玉揃いです。
しかし、人気に裏付けされるようにかなり高価なのもまた事実。
オールドレンズは製造本数やコンディションによって大きく左右されてしまうのもあり、ライカを始めたい人がどれを選べばいいのか悩んでしまっていることも少なくありません。

そこで比較的近代に登場したいわゆる廉価モデル、「ズマリットM」シリーズを選択肢に入れてみるのはいかがでしょう?

L39マウント時代に登場した銘レンズ「ズマリット 5㎝ f1.5」と同じ名を冠しながらも、比較的お求めやすいラインナップとして登場した「ズマリットM」シリーズ。
オリジナルの5㎝ f1.5と違い、f値を2.5に設定することでコストを抑えたこのシリーズは35㎜、50㎜、75㎜、90㎜の4本体制を展開しました。
当シリーズはのちにf値を2.4に改良、また35㎜はASPH.(非球面レンズ)を採用して2タイプ展開しました。

今回は2007年に登場した「ズマリット 35㎜ f2.5」を試写しました。
非球面を使わない球面レンズですが異常部分分散ガラスを採用しており、良好な色彩を楽しめる仕様になっています。

さて、ここからレンズの外観を見てまいりましょう。
(今回の個体は先端のネジ山を保護する“化粧リング”が欠品しています。)

手に持った第一印象。
小さくて軽い!でした。
しかし、金属外装の鏡胴は確かな剛性と質感を指に感じさせてくれました。

距離指標などはプリントではなくしっかりと刻印されています。

フォーカシングノブは半月状の指当てが付いており、操作しやすさに一役買っています。
無限遠ロックピンは無いので、遠距離付近も細かな調整がしやすいです。


M型ライカ初のデジタルモデル「M8」と同時期に出たこのレンズにはカメラボディに撮影情報などを伝達する「6Bit」を搭載しています。

さて、充実した機能のズマリット35㎜はどのような描写なのでしょうか。
カメラはライカM6、フィルムはフジフイルムのスペリアプレミアム400(27EX)を使用しました。

仕上がりを見て、フィルムとは思えない描写に驚きました。
ISO400の粒状性は確かに感じられるものの、鮮やかな色再現が目を惹きました。

画面全体がシャープに再現されていますが、現代のレンズにはあまり無い柔らかさも感じられました。
奥行きが感じられる描写もさすがです。

いわゆるエントリークラスの扱いですが、描写はしっかりとライカの持ち味を残していると思います。
ガラスの反射など肉眼で見ているかのような質感に感じられました。

最短撮影距離付近でf2.8にて。背景にもよりますが、とても自然なボケ味に感じました。
2線ボケやザワザワなどは感じられない、優秀なレンズに思います。

【まとめ】
価格帯に反して非常に優等生に感じられました。
現代の表現性に加え球面のどこか柔らかい描写、フィルムによる粒状性などとても好相性に思いました。
さすがにズミクロンやズミルックスのような所有感は望めないかもしれませんが、金属鏡胴に旧モデルの書体刻印など、決して手を抜かない作りは正に実用にピッタリなシリーズに思いました。
人気の35㎜は後継に非球面モデルが出ましたが、先代レンズも十分すぎるポテンシャルを持っていると実感できました。
両端がわずかに歪曲しているように見られますが、個人的にはそこまで気にならないかなあ…といった感想です。

一見地味ですが、撮影してみて出来上がりにビックリする新生ズマリットMシリーズ。
ライカの湿度をも映し出す写りをまずは試してみたいという方もいかがでしょうか?