澄んだ海で海中の素晴らしい写真を撮りたい、魚群と並んで泳いでいるところを写真に収めたい…
この欲求はデジタル時代よりも前のフィルムカメラの時代にももちろんあり、
常に〝防水〟は考えられていました。
今日では本体に防水機能を搭載しているデジタルカメラも何種類か思い浮かびますが、あくまで小雨などの生活防水レベル。そのまま海中にダイブできる訳ではありません。
解決策として、ハウジングケースなどカメラをすっぽり覆う防水ケースが作られましたが、代償にサイズが大きくなり嵩張ったり重くなったりという欠点もありました。
そこでニコンが、ケースが無くてもカメラ本体に防水機能を付加したカメラ「ニコノス」を産み出すのです。
ニコノスはフランスの潜水用品メーカーのラ・スピロテクニーク社が製作した「カリプソ」というカメラを原型に開発、1963年8月に初代ニコノスが販売されました。
それからフィルム装填方法やボディデザインの変更を経て、1984年に今回試写をしたシリーズ最終機「ニコノスV」が登場します。
他モデルのような優雅さは鳴りを潜め、正に無骨を体現したようなデザイン。わたしは初めて見たとき、某アニメの主力量産型MSを想像してしまいました。(他にもオレンジとオリーブの2色展開で、ボト○ズって例えもあるようです。なるほど!)
水中仕様という事ですが、電池を使う電子シャッターカメラなのが不思議です。
機械式の方がもしもの時に動かせそうな…。でもお陰で絞り優先機能が使えるので嬉しいですね。
見るからに高剛性を感じる肉厚なボディで、手に取るとズシリとします。なんと無く、2年間お仕えしていたお国の防人の装備を想像して桜マークを探してしまいます。
シャッター周辺。速度はBとM90、1/30〜1/1000で、AEカメラなので「A」が選べます。バルブと1/90は機械式です。赤い「R」はリワインド、つまり巻き戻しですね。巻き上げレバーは中折れ式で、ライカM4を彷彿とさせます。
反対側はISOダイアルと巻き戻しクランク。シンプルです。
目測式のカメラなので、ファインダーは素通し。大きめで、見やすいです。
下部に赤いLEDで速度が表示されます。
レンズはニコノス専用のマウント。特徴的なのはレンズの上下を変える事で上から覗いた時に絞り指標か距離指標か見やすい方を選べるんです。
水中で上からチラッと見たら見やすい様に配置されていますね。調整ノブも色分けされています。
と、いつまでも本体に見惚れてしまうので、実際にフィルムを詰めて撮影してみました。ニコノスのレンズには、水中専用・陸上専用・水陸両用の3種類のレンズがありますが、今回のレンズは水陸両用の「35mm f2.5」を使用します。
上記でフィルム巻き戻しはクランクを上げてからと書きましたが、実は…やってしまいました。クランクを巻いて「あれ、空転する!?まさか、フィルムが装填できてない??」と焦って裏蓋を開けてしまいました。
結果、数コマが光を浴びてしまったのです。
それが、こちらです。
思ったより、被害が少なくて良かった!というのが正直な感想でした。初めての裏蓋失敗で、もっと全部感光してしまっているかと思ったんですが8割くらいが無事だったので心底ホッとしました。
むしろ意図的には出せない写りなので、これはこれで幻想的というかノスタルジックで良いな、と思ってしまったり…
皆様もくれぐれもご注意くださいませ…
水陸両用とは言うものの数十年と言う歳月が経ち、もしパッキンがダメになっているのに水没させたら即ジャンクなので、さすがに水に入れる事が出来ませんでした…(弁償になっちゃうからね!)
私、目測式のカメラは完全に初めてで、距離感の判断がかなり難しく感じてしまいました。ローライ35など目測カメラユーザーの皆さまを尊敬します…
使用するには慣れがいるカメラですがシャッター音の静かさはライカに負けず劣らずの静音性で、屋外での撮影では全く聞こえないのではないでしょうか。これはすごい!
一眼レフでは無いのでミラーショックも無く、ブレをできる限り抑える事が出来たかなと思います。
静かなシャッターで目の前を切り取り、しっかりと自己主張も忘れない。
ニコノスV
街撮りに、自身の距離感の練習にもいかがでしょうか?
カメラ:ニコノスV 35mm f2.5 ¥27,500(税込)
フィルム :フジ業務用100
簡易スキャナーを使用