シンプル・イズ・ベスト!          フィルム一眼レフ「Canon FTb-N」

キヤノンのマニュアル一眼レフといえば、「AE-1」「A-1」といった小型AE一眼レフが真っ先に注目されやすいですが、いわゆるAシリーズは電池で動く電子シャッターカメラ。万が一バッテリー切れになってしまうとシャッターは切れなくなってしまいます。
今回は電池が切れても露出計以外フルマニュアルで撮影が続行可能な機械式一眼レフ「キヤノンFTb-N」のご紹介です。

ニコンとともに日本を代表するメーカー、キヤノン。
特に1971年に発売した「キヤノンF-1」はプロカメラマンに評価され、1976年オリンピック公式モデルに選出されたり、果ては北極探検のお供になったりと様々な活躍を見せました。
そんなF-1と同時に誕生した大衆向けの兄弟機、それが「キヤノンFTb」です。
シャッター速こそ最高1/1000ですが、FDレンズ群を使用できるうえ、TTL開放測光や追針式露出計などフラッグシップ機F-1と同機能を搭載しており、カメラとして十分なスペックを持っているといえます。

1973年に、そのFTbの巻上レバーやプレビューレバーなどを小改良した「FTb-N(ニューFTb)」が登場しました。

さっそく外観から見ていきましょう。

正面から。AE-1などと比べるとやや大柄ですが、非常にしっかりした品質に感じます。
上部。F-1と違いシューがペンタ部の上に固定式になりました。各ダイヤルも大きくて視認性も高いですね。左側のスイッチは露出計用です。
レリーズボタンの外周にはシャッターロック機能があり、フィルムを巻き上げた後でも安全に持ち運びがしやすくなっています。また、巻上レバーは分割巻上も可能です。
側面には露出計用の電池室があります。バッテリーはMR-9です。
F-1に通じるデザインのセルフタイマー。プレビューやミラーアップも兼ねています。

ボディ前面に付いている「QL」とは「クイック・ローディング」の略です。
フィルム装填をより簡単に行えるという画期的機構です。

裏ブタを開くと巻取りスプールの上に金属のカバーが見えます。
さらに開くとカバーが開き、スプールの真下に赤いチェックマークが見えます。
赤いマークにフィルム先端が来るように伸ばします。
後は裏ブタを少し閉めるとカバーがフィルムを挟んでホールドしてくれますので、そのまま裏ブタを閉じます。

一般的にフィルムカメラはスプールのスリットにフィルム先端をうまく差し込んで巻いていきますが、「QL」を採用しているタイプはこれだけでフィルムセットが出来ます。この機構は同社コンパクトカメラ“キヤノネット”でも採用しているモデルがあるので、見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

では今回の実写です。
レンズは「Canon FD50/1.8」
フィルムは「KODAK カラープラス200」
を使用しました。

過度な色付けは無いように見え、非常に優しい描写に感じました。
気持ちアンダー寄りに。全体的に濃いめになったかもしれませんが、雲の立体感を表現できたと思います。
鈴の金銀の輝きもさることながら紙垂(しで)の白さが際立っています。
お寺とタワマンと通信塔。モダンとレトロが並ぶ、少し面白い場所でしたので一枚。

【まとめ】
とても撮り応えのあるカメラでした。
やや大柄でズシリとくるカメラボディは、後のシリーズに比べ確かな剛性感を感じどこか安心できました。
シャッター音はミノルタSRT101に近いかもしれません。シャッター音が思ったより大きめでしたが、それがまた“今、写真を撮っているんだ!”と実感させてくれました。
布幕シャッターの為かどことなく優しいレリーズ音にも感じました。ボディの重量もミラーショックの軽減に貢献しているかもしれませんね。
便利なはずのレリーズロックですがついつい解除し忘れてしまい、担当はシャッターチャンスを逃してしまったことがありましたので、ご注意ください…。
フィルムや現像方法との相性もあるかもしれませんが、FDレンズはとてもナチュラルに描写されるレンズに感じました。
特に発色がとても自然に感じ、私の好みに合っていました。

かわいそうなことにジャンク籠でお見掛けすることが多い子ですが、調子のよい個体と出会えた時…
FDレンズの虜になってしまうかもしれません。
世界的トップシェアメーカーの黎明期をMF機で感じてみてはいかがでしょう?

【キヤノン関連商品】
New FD50/1.4(K0461)
FD 200/2.8 S.S.C. (A1014)
FD 85/1.8 S.S.C. (A1572)