M42マウント・パンケーキレンズ「インダスター 50/3.5」

「パンケーキレンズ」。
皆様は聞いたことがあるでしょうか?
“薄くて軽量”持ち運びにも便利でキャップ代わりに付けておいてもかさばらないレンズの総称として定着しており、ニコンの「Ai-s50/1.8」やキヤノンの「EF 40/2.8」など世代を超えて様々なメーカーから産み出されてきました。

今回は、かつてソビエト連邦にて製造されたパンケーキレンズ「インダスター 50/3.5(M42マウント)」のご紹介です。
一般的に“ロシアレンズ”と呼ばれているカテゴリですが、ソビエト連邦時代の製品も含めてのネーミングのようですね。

もともとはソビエトのカメラ「ゼニット」用に製造されたレンズで、出た当時は「M39マウント」で運用されていたようですが、後にゼニットはM42マウント規格に変更になり、今回のレンズもM42マウントとして誕生したそうです。
(「インダスター 50-2」は2代目を表しているようです。)

レンズ構成は3群4枚のテッサー型。シャープさに定評があります。

では、外観から見ていきましょう。

非常にコンパクトな造形です。鏡胴は光沢感があり、銘板はシックな半光沢になっています。
絞り輪はクリックの無いタイプで、つい触って絞りを変えちゃわないか少し心配です…。

指標の裏側には“MADE IN USSR”の文字が刻印されています。

ライカレンズ(L39マウント)と比較。一眼レフのレンズとは思えない小ささで、ズマロン35/3.5に近いですね。
外装はアルミでしょうか、金属製の質感を感じつつも非常に軽量です。

このレンズは実絞り、つまりシャッターを切った瞬間だけ設定したf値に絞り込まれる「自動絞り」とは違い、実際に撮影する絞りまで設定しないといけません。つまり、f11など絞れば絞るほどファインダー内が真っ暗に…。

では試写の結果を見ていきます。
カメラはペンタックスSL(ASAHI PENTAX SL)
フィルムはコダック ゴールド200(KODAK GOLD 200)
を使用しました。

ピントの合っている部分は驚くほどシャープで、なおかつどこか柔らかく描写されているように感じました。

フィルムの特性も相まってか、黄色と赤が強く出ているような気がします。少し絞り込んではいますが、開放f値が暗いからかボケも控えめな一枚に。

ファインダーが暗くなってしまいますが、開放でもここまで写せました。ミラーレスではさらにレンズを活かした写真が撮れるのでしょうか。

手ブレしないように息を止めてパシャリ。光の反射した路面の質感などかなり好みです。

【まとめ】
実絞りというのに慣れが必要でしたが、小さく軽いため非常に取り回し良く、また撮影結果にとても驚いたレンズでした。
いわゆる“ロシアレンズ”といわれるタイプは当たりはずれが大きいとよく耳にしますが、先の大戦直後にあのカールツァイス研究員を連行しカメラレンズを作らせたという話も聞きますので、写りに“おっ!”となってしまう個体にも出会える可能性は高いかと思います。
また今回は注意して撮影しましたが、逆光時のゴーストやフレアなどでも個性が出るレンズのようなのでアダプターを通してミラーレス一眼で楽しむ方にもうってつけかもしれませんね。
比較的お手頃価格で入手できるレンズですので、ロシアレンズやオールドレンズ&M42マウントレンズ入門としていかがでしょうか?

【おまけ】
今回試写したレンズは指標位置がズレにズレてしまい、マウント下部になってしまいました…。
(撮影結果は問題なし)
大手カメラメーカーではなかなか見られない光景なので、ちょっと新鮮…

【ロシアレンズ関連商品】
ジュピター 35/2.8(L39) (A1800)
ロシア製 インダスター61L/Z-MC 50/2.8 (M42) (A0519)