気負わず始められる国産二眼レフカメラ「プリモフレックスⅢA」

以前ヤシカフレックスC型をご紹介しましたが、今回は使用法が近い東京光学製の二眼レフ機「プリモフレックスⅢA型」のご案内です。

今も世界で活躍する時計トップブランドのSEIKO(旧:精工舎)を母体に産まれた東京光学。
先の大戦ではニコン(旧:日本光学)とともに軍需産業として光学製品を陸海軍に納入していました。

戦後、2社とも民間の光学製造企業に転身し、歴史的な製品を生み出しました。

現在、東京光学(現:トプコン)はカメラ業から撤退してしまいましたが、医療・測量機メーカーとしてトップシェアを誇っているそうです。

さてこのプリモフレックスⅢAですが、1954年に登場したようです。プリモフレックスには複数のモデルがあり、最高速1/500のシャッターを搭載した中級機のⅡ型に対し普及機として販売されたとのことですね。

ザ・二眼レフといった外観です。
右側にはピントリングとフィルム巻上ノブがあります。
フィルムを装填して赤点の位置までスタートマークを送ります。
蓋を閉めて巻上げ解除ボタンを押しながら、右下のツマミを押し上げます。するとフィルムカウンターが〇印に変わるので、これが“1”になるまで巻き上げます。
1が出たら巻き上げロックが掛かるので、ここから1枚ごとに撮影して巻き取っていきます。
シャッターは富士精密製のレクタスシャッター。プロンターシャッターという有名なシャッターのコピーモデルです。デリケートな構造のためそこまで評価は高くありませんが、それゆえ比較的お求めやすくなっています。

シャッターはB~1/200。一見すると物足りなく感じるかもしれませんが、ISO100フィルムを常用するのであればそれほど不足には感じませんでした。

レンズは3枚構成のTOKO7.5cm f3.5。ヌケの良さが期待できます。

当時国産二眼レフによく見られたシャッターチャージとフィルム巻上は別動作のタイプです。巻上忘れで二重露光になっちゃわないように注意です。
スクリーンは見やすいTOKOBRITE(トーコーブライト)。ルーペは引き出し式ですが、充分な性能かと。

では、3枚玉のTOKOレンズはどのような描写をしてくれるのでしょうか?

夕暮れの一枚。雲一つひとつの奥行き感が分かります。
微かな光が差す場面でも暗部が潰れない表現力。さすがです。ドアの赤色もトプコンならではに感じます。
少々ドライな色味はトプコンの中判カメラの特色なのでしょうか。ボケは予想よりもまろやかな印象です。

【まとめ】
前にご紹介したヤシカフレックスC型と同じくらい扱いやすいカメラでした。
上位機種のプリモフレックスVaにも近い色味の画作りだったように思います。
ピントルーペが指で持ち上げる方式なので少々難儀でしたが、のんびりと撮る向きにはそこまで支障は無いのかな、と思います。
廉価なカメラという扱いを受けやすいモデルですが、オートマットの確実性や確実な裏ブタ固定など剛性は非常にしっかりしており、35mmフィルム顔負けの描写を見せてくれました。
ストラップは汎用品をそのまま使えるデザインなど嬉しい仕様で、フォトウォークの際も頼もしいパートナーになってくれるでしょう。

気になる点としては、
・フィルムカウンターをセットする方法を慣れる必要がある。
・シャッター速が遅めなので、日中の高感度フィルムは使いづらい
といったところでしょうか。
後年になると信頼性の高いセイコーシャラピッドを搭載しているモデルも登場しますが、前述のとおりレクタスシャッターは少しデリケートなので購入の際は最初から調子の良い個体をお求め頂きたいです。

とはいうものの、35mmフィルムより段違いに大きいフォーマットの中判カメラ、その写りは一度見てしまうと後戻りは出来ないくらいの魅力を秘めています。

中判カメラは敷居が高くて…
とお思いの方にこそおススメしたい気軽な二眼レフ、プリモフレックスⅢAでした。