銀幕の小さな部屋 5巻目「スモーク」

先日やっとレリーズと三脚を入手しましたので、念願の長時間露光の練習をしております。時計の秒針を睨みながらレリーズを押し込み、ドキドキしながら完成したプリントを眺めると道路にテールランプの赤い光線が一筋横切っていました。肉眼では決して見る事の出来ない光景に魅せられております。

さて今回は、私が「あ、レリーズ(と三脚)を使った写真を撮りたい!」と思ったきっかけの作品の紹介です。

「スモーク」(1995年)
アメリカ・日本・ドイツの合作映画で、監督は香港出身のウェイン・ワン。
主演は「レザボア・ドッグス」でカリスマ的存在感を発揮したハーヴェイ・カイテル。共演に社会派ドラマから「キャプテンアメリカ」などエンターテインメント作品まで、幅広い活躍のウィリアム・ハート。また味のあるバイブレーヤーとして、ハリウッドの鶴瓶師匠ことフォレスト・ウィテカーが出演しています。

【あらすじ】
ブルックリンで小さな煙草屋を経営するオーギー。彼の趣味は、毎日一眼レフで店の前を撮影すること。そんな彼のお店の常連で作家のポールは、ふとした事から家出少年に命を救われる。3人がそれぞれ抱える人生の岐路を軸に物語が描かれていく…

一件のタバコ屋から繰り広げられる、群像劇です。アクション映画のような緩急は無いものの、だからこそ何年経っても色褪せる事無く世代を超えて愛される作品になっています。定期的に単館系の映画館で「4Kリマスター版」が上映されているみたいで、この作品がいかに幅広く愛されているかが伺えます。

今回は、主人公オーギーの使用しているカメラをご紹介。

映画「スモーク」より引用

お店の前で三脚に取付けられ、レリーズを繋がれている銀色に堂々と輝く35㎜一眼レフ。

キヤノンの「AE-1」のようですね。1976年に発売されたキヤノンのオートマティック一眼「Aシリーズ」の切り込み隊長です。何と言っても「世界初のマイクロコンピュータ内蔵カメラ」として世界のカメラ市場に風穴を開けました。

そんなAE-1の自動露出はシャッター優先AE。手ブレの防止・解消を第一に考え、一眼レフをより大衆に受け入れられる様にした名機ですね。
機械式から電子式になったことで部品点数を大幅に減らし、またプラスチックの採用でF−1よりも軽量化。自動巻き上げ装置「パワーワインダーA」を使えば秒間2コマで連続撮影が出来る事から、キャッチフレーズは“連写一眼”となっています。

映画「スモーク」より引用

仕上がったプリントを確認するオーギー。使用しているフィルムは、黒ケースに灰色のキャップ…コダックのTRI-Xあたりでしょうか。
なんと休み無く、毎日一枚撮影して4千枚にも及んでるそうです。
4千枚を365日で割ってみると……11年!?
正に、「継続は力なり」ですね。

映画「スモーク」より引用

シャッター速度優先機ですが、建造物(自分のお店)や周りの通行人を計算して撮影しようと三脚・レリーズを使っているのでしょうか。カメラ自体の出番はかなり少ないのですが、物語のキーアイテムになるので印象に残ります。

偶々手に入れたという設定ですが、ひたすら愚直に一台のみを使い続ける。それもまた、ひとつのカメラへの愛情表現なのかもしれませんね。唯一無二の相棒感に憧れてしまいます。(ちなみに、劇中ではAE−1の元箱も出てきます!中古だと中々見られませんね。)
さて、今回ご紹介した「キヤノンAE−1(シルバー)」、当店でも販売しております。(売切の際はご容赦下さいませ)
これからカメラを始めたい方、デジタルから始めてフィルムカメラにも興味の出てきた方、街歩きに軽快な頼れる相棒を連れ出してみてはいかがでしょうか。

映画「スモーク」より引用

出典:「スモーク」 1995年製作
監督:ウェイン・ワン
出演:ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート、フォレスト・ウィテカー