皆さんは「怪獣」と聞いたら何を思い浮かべますか?
雄叫びを上げながら街を破壊し、人々を恐怖に陥れる…。正にそんなイメージを完成させたキング・オブ・モンスター「ゴジラ(GODZILLA)」は終戦から9年しか経っていない1954年に公開されました。「水爆大怪獣」がキャッチコピーですが、「怪獣王」がやはりしっくりきますね。
監督は本多猪四郎。特殊技術は後に「ウルトラマン」を手掛ける円谷英二。音楽は特撮音楽界の巨匠、伊福部昭が担当。
出演するのは、宝田明、河内桃子、平田昭彦。さらにゴジラの生態を解き明かそうとする学者役に、黒澤明作品の大常連の志村喬が出ております。
【あらすじ】
海洋で貨物船が消息を断つ。大戸島の漁船が駆けつけるもまたもや沈没、辛くも生き延びた地元漁師は「大きな生き物が暴れている」と証言する。一報を聞きつけた記者が取材に訪れると、村の翁は古から伝わる怪物「呉爾羅」だと言う。その夜、大戸島に暴風雨とともに巨大な足音が響き渡り、家屋を破壊する。考古学者の山根博士は、娘の恵美子とその恋人尾形らとともに大戸島に調査団として向かうが…
東宝株式会社が洋画「原子怪獣現わる」や「キングコング」に着想を得て製作した特撮映画の大傑作です。
着ぐるみや頭部・足のパーツなどシーンによって使い分けられてます。
相次ぐ人類の核実験により住まいや自身も危害を受けその怒りから人類に反撃する。街を破壊して歩く怪獣の姿に公開されるや観客は衝撃を受け、世界的にも「KAIJU」と認知されるほどの大ヒットになりました。
恵美子役の河内桃子さんと、尾形役の宝田明さん。二人ともお若い!
宝田さんは撮影前の自己紹介で「主役の宝田です」といったところ、スタッフさんから「主役はゴジラだ!」と怒られたそうです。
調査団を率いる山根博士役の志村喬さん。黒澤明作品「七人の侍」「野良犬」など知らない人は無いほどの大ベテランさんです。
記念すべき怪獣王ゴジラの初登場シーンです!何とも恐ろしい形相です。
(何かをキメてる様な目をしてます…)
1950年代の東京風景。上の写真はナショナルや雪印のネオンがあるので、銀座かと思われます。
下の写真は伊勢丹や高野フルーツパーラーがあるあたり、新宿でしょうか。
当時の銀座のすずらん通り。当時からお店が連なる華やかな通りだった様ですね。(ミニチュアでしょうか?)
ゴジラ、晴海通りを進みます!我がカツミ堂は1949年からあるので、もしかしたら踏まれちゃってるかも知れませんね…
有名な和光の時計塔を破壊するシーンです。当時このシーンを見た和光側は大激怒。以後数年に渡って東宝作品に和光ビルの使用許可を出さなかったとか。(現在は和解しており、シン・ゴジラにも出てます!)
また、松坂屋も憤慨。嘘か誠かこの件でしばらく銀座を出禁になったそうです。
こちらも有楽町のシンボル、日本劇場です。「日劇」の愛称で親しまれてますが、ここもシッポでバコーっとやられます。
ゴジラに蹂躙された東京。生々しく作られていて、本物と見間違えます。
その他にも「せっかく長崎の原爆から命拾いしたのに」といったセリフや、ガイガーカウンターを当てられる子供など、とても娯楽作品とは思えないリアリティです。
(ちなみにゴジラが口から出す光線は放射熱線のため以降のシリーズと違い大爆発はせず、溶解したり燃えたりしてます)
切り札「オキシジェン・デストロイヤー」。これでゴジラに最後の戦いを挑みます。果たして、結末は…!!
このままでは映画紹介で終わってしまいそうなので、ここで今回のカメラを見てみましょう。
新聞記者の方が持っているカメラですが…全然わかりません。
別の角度から。蛇腹上部に二本のバーが見えます。また、向かってボディ右側にストロボを取り付けていますね。
レンズを挟んで縦に線の様なものが見えます。もしかすると、1923年のゲルツ・アンシュッツ・アンゴーの可能性が出てきました!フォーカルプレーンシャッターで最高1/1000の速度で撮影することが可能です。
続いて、山根博士のカメラです。一見バルナック型ライカに見えますが、良く見るとビューファインダーがありません。おそらく、キヤノンのレンジファインダーカメラかと思われます。
かすかにボディ前面にスローシャッターが確認できます。また、巻き戻しレバーの根元に段差が見えることから、視野倍率の可変レバーが搭載された1949年の2B型以降のモデルかと思われます。1954年当時の最新型4SB改型を採用している可能性は高そうです。使い勝手においてライカを超えたと言われるキヤノン4SBの改良型で、シャッターを切った後でも速度確認が出来る中軸指標が搭載されたこと、シャッター速度が倍数系列化となったこと、またフィルムの枚数をメモしておける目盛りが付くなど嬉しい配慮。正にキヤノンのバルナック型カメラの最高峰モデルとなっています。
当店のキヤノン4SB改はこちら
山根博士「このゴジラが最後の一匹とは思えない」
とても心に残ります。我々が呼び覚ました怪物が我々を襲う。
人類の脅威も安寧も左右するのは、結局のところ他ならぬ人類なのかも知れません。
出典:ゴジラ(1954年)
監督:本多猪四郎
出演:宝田明、河内桃子、志村喬、平田昭彦、ゴジラ