ニコマートELは1972年に発売された一眼レフカメラです。
ニコン初の記念すべき電子シャッター機とのことですね。
当時はまだ機械式シャッターカメラが主流で、露出計が搭載されていれば御の字、基本的には露出(写真の明るさ)まで含めて自身で考えて撮影するという正にプロの仕事道具というカテゴリでした。
そこでAEカメラ、つまり露出決定を手伝ってくれるカメラが登場。
写真は「絞り」「シャッター速」「フィルム感度」をバランスよく調整して作り上げていきますが、フィルム感度を設定すればAEカメラはその内の一つ「シャッター速」か「絞り」を決めてくれ、撮影者はもう片方とピントだけに集中できる画期的な機能を搭載し、写真という文化を大衆に普及させることに貢献しました。(とは言ってもカメラ自体が十分高級品でしたが…)
ところでニコン純正のこのカメラ
「“ニコン”なのに、なんで“ニコマート”なの?」とお思いの方もいらっしゃるかと思います。
この当時「“ニコン”銘が付くのはフラッグシップ機(プロ機)だけ」という概念から、普及機は“ニコマート”銘が付けられた様です。
しかしながらそこはニコン。普及機でありながらプロカメラマンの酷使にも十分耐えられる仕様で作り上げてしまいます!
兄弟機シリーズの機械式シャッター機「ニコマートFTn」はベトナム戦争で「ニコンF」のサブ機として大活躍していました。
さて、各部を見てまいりましょう。
上部から。ニコマートELはその後の発展モデル「ニコンFE」シリーズに非常に近い操作方法で撮影できます。露出補正ダイヤルこそ無いものの、シャッター「A」ポジションを外せばマニュアル操作での撮影も可能です。
ニコマートELユーザーなら誰しもがクイズを出したがるバッテリーの収納場所。
ミラーの真下に電池室が隠されています。使用バッテリーは4LR44を一つ使用。
レンズの脱着はオールドニコン伝統の“ガチャガチャ”です。
万が一電池が切れても1/90は緊急用として機械式シャッターが切れるようになっています。
控えめながら、巻き上げレバーの真下に“Nikon JAPAN”が刻まれています。
腕前を隠す手練れの侍の様でなんとも渋いです。
この個体は右肩に大きなアタリがありますが、全く支障なく動作してくれました。
今回の試写フィルムは「コダック ウルトラマックス400」を使用しました。
レンズは非Aiの頃のニッコールです。
今回使用したのはいわゆるAi化前のニッコールレンズでしたが、現代のシャープで色乗りも良いレンズとは一味違った、非常に趣のある描写に感じました。
後継機種ニコンFE2では不可能な「非Aiニッコールレンズも絞り優先で使えるフィルムカメラ」として魅力的な一台だと思いました。(カニ爪が付いているのが前提です。)
電気式カメラなので修理・メンテナンスとなると厳しい面はありますが、以降の中級機に比べ非常に廉価で販売されているニコマートシリーズ。
本調子の一台を見つけられたら、決して期待を裏切らないカメラだと思います。
おまけ。50/1.4をほぼ開放で。光源の滲みが何とも言えない幻想的な雰囲気を作ってくれました。