海外、特にアメリカでは消防士の人気は非常に高く、まさにヒーローとも言える職業です。
本来は回避すべき火災の中に自ら飛び込み、救助者を助ける。そこに善悪は無い。
そんな屈強な男たちのドラマ、「バックドラフト」のご紹介です。

【あらすじ】
消防士の父を持つマカフリー兄弟。弟のブライアンは随行した火災現場で父が殉職するのを目撃してしまう。
それから20年後、消防士となったブライアンは兄のスティーブンが指揮を執る第17分隊に配属される。
奇しくもその前後に「バックドラフト」現象による死亡事故が多発する…。
タイトルにもなった「バックドラフト現象」とは…
室内火災などで酸素が足りない状態でドアや窓を開けたときに大量の空気が入り込むことで爆発炎上する現象です。
その勢いはドアを軽く吹き飛ばしてしまうことも。
ベテランの消防士も予想が難しく、劇中でも「火は生きている」といった畏怖にも似た存在として扱われています。
さて、バックドラフトは1991年に公開されたハリウッド映画です。
監督は「ダヴィンチ・コード」や「アポロ13」を創った巨匠ロン・ハワード。
主人公ブライアンに「フェアゲーム」などの甘いマスクで人気のウィリアム・ボールドウィン。
兄のスティーブンには「遊星からの物体X」でも頼れる兄貴分を演じることに定評のあるカート・ラッセルをキャスティング。
他にもスティーブンの右腕役にスコット・グレン、火災調査官にロバート・デ・ニーロ、収監されている放火魔役にドナルド・サザーランドなど超豪華。
心揺さぶるテーマ曲を鬼才ハンス・ジマーが手掛け、物語に花を添えます。
(日本では鉄人が料理を作るバラエティ番組でも採用されています。)

ブライアン役のW・ボールドウィン。若さ故か少し頼りなさげなキャラです。

幼馴染ジェニー役のジェニファー・ジェイソン・リー。バリバリなビジネスウーマンですが、芯の強い女性です。

兄貴スティーブン役のK・ラッセル。豊富な経験で小隊の部下たちを導きます。

火災調査官のリムゲイルを演じるロバート・デ・ニーロ。冷静沈着ながらも熱いハートを持っています。

遊び心も欠かさない分隊の女房役アドコックス役のS・グレン。

放火魔ロナルドにはD・サザーランド。「24」で有名なK・サザーランドのお父さんです。
骨太なドラマを盛り上げる影の主役は、今回の最大の敵である「炎」です。
確立していたグリーンバック方式やCGといった特殊効果ではなく、撮影にはほとんど本物の火を使用して撮影されました。
ガスの噴出量などを調整して火災の具合を表現していたようです。
(USJにも存在したアトラクション「バックドラフト」も同じ方式で再現していたのでしょうか…。)


そんな名作にはどんなカメラが活躍しているのでしょうか。

父の殉職というショッキングなシーン。この悲劇を撮影しているカメラマンの手にはシルバーボディの一眼レフですね。
解像度が低いので確信はありませんが、当時の設定が70年代ということと、シャッターを触る指の位置がボディやや後方に見えることからおそらく「Nikon F アイレベル」ではないかと思われます。

1959年に登場した革新的一眼レフで、瞬く間に報道記者の相棒になりました。
その堅牢さは1971年にNikonF2が登場しても本業者から「特に世代交代する必要はない」といった意見もあったとか。
劇中の映像を見るとローレットが見られることから「オートニッコール」。先端が銀枠なので、50㎜か35㎜あたりではないかな〜と思われます。(28とかの可能性も?うーん…)
お腹にもう一台ぶら下がっていることから、ニコン2台体制で現場に臨んでいますね。
続いては、ブライアンの初出動シーンから。

こちらは劇中で現代の設定なので90年代でしょうか。
わりかし小型なシルバーボディにスピードライトを装着して縦構図で撮影しています。
軍艦部にロゴが見られますが、最初はペンタックスかと思いましたが、銘板が「TOP…」と見えるのでおそらく東京光学“TOPCON”製カメラではないでしょうか。
軍幹部にホットシューが備え付けられているのと巻き戻しクランクが黒、巻き上げレバーに黒い指当てが付いていることから機種を絞り込めそうです。
おそらくですが、1976年発売のNew IC-1オートの様に見えます。
TOPCON IC-1オート(1974年)は電子制御式シャッターを採用したシャッター優先AEカメラです。
シャッターの最高速は1/500ですがレンズ交換のできるフォーカルプレン機で、数種類の交換レンズも用意されていました。
その2年後にホットシューを装備するなどマイナーアップデートされた機種がNew IC-1オートです。
劇中でもホットシューに延長コードが装着されていることから、このカメラでは無いかと思いました。
現在では経年劣化等で本来の性能を発揮できる個体は減ってきていますが、当時の写真機に比べ比較的安価に流通したモデルのようで、高級一眼レフに手が届かなかった層に圧倒的支持を受けたシリーズだそうです。
(参考画像は用意できませんでした…)
【まとめ】
期せずして「海のニッコー、陸のトーコー」を見ることが出来た(?)作品でした。
テンポの良い重厚なストーリーに、兄弟を軸とする濃厚なヒューマンドラマ。スタントを極力排除し、役者が実際の炎と対峙した緊迫感あるシーンの数々。
(個人的には兄弟喧嘩の時のラッセルの頬の震えがとてもリアルで印象深かったです。)
現代ではCGで処理されてしまうかもしれないほどの“本物”がギュッと詰まった1本でした。
エンドロールの曲も心地よい、90’Sの世界観に浸りたい方にも是非お勧めしたい映画です。
出典:バックドラフト(1991年)
監督:ロン・ハワード
出演:ウィリアム・ボールドウィン、カートラッセル、ロバート・デ・ニーロ、スコット・グレン、ドナルド・サザーランド…etc

