皆さんは「フィルムカメラ」と聞いたら、何を思い浮かべますか?
ニコンF2やキヤノンF−1に代表されるような一眼レフ。ライカが世界に広めたレンジファインダーカメラ。または、ハッセルブラッドやローライフレックスのような中判カメラをイメージされる方もいらっしゃると思います。
しかし、ここで開口一番に「スプリングカメラ」とお答えになる方、かなりの通かも知れません。
コダック。フィルムの名前でもご存知の方もいらっしゃるでしょう。アメリカのメーカー、イーストマン・コダック社は、1931年ドイツの気鋭ナーゲル社と合併してドイツ・コダックを設立。ナーゲル社は合併に際して「商品はウチが100%企画・製作する」と強いこだわりを示し、ナーゲル社を高く評価していたコダック側もそれを承諾したそうです。1934年、35mmスプリングカメラ「コダック・レチナ」初代が誕生します。レチナは安価かつ高性能の為、世界的な大ヒット商品となりました。その後、第二次世界大戦という激動の時代を経て、1969年にレチナシリーズは終了します。
レチナシリーズは各モデル毎に複数のマイナーチェンジが行われています。今回は1949年〜1951年、つまり戦後に作られた「レチナII(ローデンシュトック・ヘリゴン50mm /F2)」を試写してみました。
スプリングカメラの「スプリング」は普段レンズを収納しておくことができ、撮影の際にはボタンを押せばバネの力でレンズが飛び出てくる機構から、そう呼ばれています。ちなみにコダックは初代レチナの誕生に合わせて、予めパトローネにフィルムが装填された“135フィルム”を発売したそうです。ちゃっかり歴史を動かしていたんですね。その偉業は現在の販売されている35mmフィルムを見れば明らかです。
ローデンシュトック社のレンズ「ヘリゴン」を搭載したレンズシャッター機で、
フィルム巻き上げは右上のノブをカリカリ回して巻き上げます。後は、ピントを合わせてレンズに付いてるチャージレバーを起こしてシャッターを切る。これを繰り返します。
絞り、シャッター速度(B〜1/500)は共にレンズ部に付いてます。シャッター速度は現代の速度表示とは違いますね。
普段は、レンズを収納してコンパクトに運べます。スーツのポケットにも難なく入ります。
スマホじゃなくて、レチナをさり気なく出したら、気分はもうドイツ紳士ですね。時代に左右されないデザインなので、フォーマル・カジュアルどちらにも無理なく合わせやすいですね。
実際に試写をしてみて近代的なファインダーに慣れていたためか、レチナのファインダーは最初とても見づらく感じてしまいました。でも、徐々に慣れてきたのか最後の方にはある程度コツがつかめてきました。実際に撮影するなら2m位がベストかも知れません。
はい、いきなりやらかしました。主役の看板がボケてしまいました…。三脚を使わず気軽に実験しようとしたのが裏目に出てしまいました。ですが後ろのボケはかなりまろやかで、点光源の玉ボケなどはとても幻想的です。
f4まで絞ってみても、後ろのボケは柔らかく見えます。主役の看板はキリッとしてきましたね。
f11まで絞ると全体がかなりはっきりしてきますね。レンズシャッター機なので一眼レフのような衝撃もなく、手持ちでもかなりスローシャッターで撮影しやすいです。
夜間でもお店のライトがある場所では、f2で充分の雰囲気ある写真が撮れます。
日中は流石お手の物ですね。シャープで、立体的な写りをしてくれました。
今回レチナの試写は、“カメラに撮ってもらう”のでなく、“カメラを操作して写真を撮る”という醍醐味を存分に堪能できました。
露出計など搭載されていない時代。大先輩からの課題に向き合って丁寧に一枚をフィルムに収めていく、とても心地いい時間を過ごせました。
使用カメラ:コダック レチナII ¥38,500(A0453)
使用フィルム:フジ業務用フィルム24枚 iso100
現像・CDデータ化:フジ・フロンティアにて。