スナップにもってこい! “招き猫”スタイルカメラ「コニカⅢ」

以前作例のみブログを掲載しましたが、日本最古のカメラメーカー小西六(現コニカミノルタ)が1957年前後に発売したレンジファインダーカメラです。
このカメラは不思議なことに発売年が諸説あり、1956年の資料や1958年の資料も見られました。
海外にて先行販売されたのち日本でも発表があったそうで、そのため資料が混乱してしまったのでしょうか。

レンズ交換の出来ないレンズシャッター機ではありますが、終戦直後から製造されたコニカⅠ型の流れを汲む高級機として機能もさることながら、確かな描写力で非常に高い評価を受けました。
特徴的なのがフィルム巻上レバーで、通常のカメラは巻上レバーが上部に搭載されているのに対し、この機種はレンズの真横にあります。このレバーを二回動作させることでフィルム送り&シャッターチャージを行います。
この独特な作法がゆえに、このカメラは“招き猫”の異名があるとか。
このタイプのカメラは世界的にも数えるほどしかありません。

“生きているファインダー”と評された、後に産まれる大傑作「コニカⅢA」と違いアルバダ式ファインダーでパララックス自動補正などは非搭載ですが、フレームは非常に見やすいです。
特筆すべきは二重像が黄色と紫に色分けされており、像が重なったとき(ピントが合った時)に自然色に見えるというとても合わせやすい仕様となっています。


ここから外観を見てまいりましょう。

一眼レフ機などに比べかなりコンパクトですが、金属製のズシリとした重みがあります。
シャッターは信頼のセイコーシャMXL。シャッター速はもはや定番のB.~1/500です。
シャッターと絞りはライトバリュー式になっています。時期によってデザインが変わっている個体もあるようです。
上部にあるカメラ名の刻印。どこか大人の余裕を感じられる書体です。
搭載されているのは名レンズと言われる「ヘキサノン48mm f2」。ごく少数ですが“48mm f2.4”のモデルもあるようです。
フィルム室の開閉は、ノブの矢印をCからOに回して…
起こしたノブをOの方に倒し、押し込むと開きます。
フィルム室展開。フィルム室内部も上質な仕上がりです。
フィルムを装填したら、向かってレンズ右側のレバーを…
ガチャンガチャンと下に押し込みます。これで撮影が可能になります。

この巻上レバーは親指での操作はもちろん構えながら人差し指でもチャージしやすく、持ち方次第ではファインダーから目を離さず連続撮影が出来ます。
また、フィルムの巻き戻しは前2作とは違いクランクを装備。装填からフィルム巻取りまで快適に行うことが出来ます。

ここから作例です。
和製ズミクロン”の一つとされている「ヘキサノン」。
はたしてどのような描写を楽しめるのでしょうか。

まずコダックGOLD 200での作例です。

Gold 200フィルムの為かやや黄色が強いかもしれませんが、見たままに近い雰囲気を出せたと思います。
ピントの合っている所は非常にシャープで、被写体を引き立てるやさしいボケをまとった描写に感じました。

続いて、MARIXフィルム400Dを試しました。

花の本来のピンクに近い発色なのでは無いでしょうか。コンクリートの質感もよく出ていると思います。
快晴の花壇。各色とも主役級の鮮やかな発色です。
夕暮れのバス停。金属や電光掲示板の質感もしっかり再現されているかと思います。

【まとめ】
ファインダー内の二重像のズレも非常に見やすく、快適にピント合わせが出来ました。
シャッター速と絞りリングの操作はライトバリュー式のため最初は戸惑うかも知れませんが、使いづらいということでは無く、使い込むほどによく考えられたカメラだなあと発見できる一台でした。
レンズシャッター機なのでシャッター音が小さく、ショックもほとんど無いという点も街中スナップの際に使いやすく高ポイントでした。
あえて注意点といえば露出計は搭載されていないので、単体露出計もしくはスマホアプリを用意しておくと安心かなと思います。

スタイリッシュな見た目の中にどこか武骨さがあり、なのに手招きしているかのような巻上げ動作が愛らしく愛着がわきました。
巻上げもピント合わせものんびり楽しんで行える贅沢なカメラだと思います。

定期的なメンテナンスはもちろん必要ですが、長く使える機械式カメラ。
このカメラでシャッターチャンスを招いてみてはいかがでしょう?