【初心者向け】これからフィルムカメラを始める方へ ~被写界深度編~

被写界深度。カメラライフを送っていると結構な頻度で出てくるワード。
「被写体と背景を被写界深度内に収める」「モデルを際立たせたいので、被写界深度を浅くする」
といった具合でしょうか。

被写界深度とは、おおざっぱに言うと“フォーカスを合わせた時のピントが合って見える範囲”ということになります。
ピントを合わせた箇所の前後にもピントが合う範囲があり、
例えば、ポートレイトなどの撮影で被写体の背景を完全にボカシて引き立たせたいとか、背景も併せてピントが合った状態で撮影したいといった状況で調整していくのが多いと思います。

以前の記事で、写真は「ISO感度・シャッター速度・絞り」の3つをうまく組み合わせてちょうどいい明るさにするとお伝えしました。
今回はその中の「絞り」を使います。

レンズ内にある金属のプレートが“絞り羽根”です。この羽根を動かして、穴の大きさを変えていきます。

基本的にオールドレンズの根元に付いている目盛(先端の場合もあり)が絞りリングです。
カメラから外して回してみると、数字が大きくなるに従ってどんどん穴が小さくなっていくと思います。
この穴が小さくなっていくことを「絞りこむ」と表現し、逆に穴を大きくしていくことを「絞りを開ける」と表現したりします。

絞り開放 f1.8 (SMCタクマー 55/1.8)
絞り込み f8 (SMCタクマー 55/1.8)

では、この絞り(穴)を動かすとどうなるのか。
絞り(穴)が大きいと、ピントの合う範囲が非常に狭く、すぐ前後はもうボケています。
逆に、絞り(穴)が小さいとかなりの範囲にピントが合っているのが分かります。
つまり、このレンズの絞りを調節することでピントの合う範囲を決めているわけです。

ここで、作例をお見せします。
機材は「ニコンD90(APS-C)」と「Nikon Ai nikkor 35/2.8」です。フルサイズ換算で約50mmのレンズとして使えますね。
※三脚なしの手持ちMFレンズでマニュアル撮影のため、微妙に露出&構図が変わっております。

絞り開放f2.8の描写。被写体より後ろがボケています。
f8。少し背景の輪郭が出てきました。
f11。ショーウインドウやドアもぼんやり見えてきました。
f22。全体的に結構クッキリしてきました。(実際には絞り込みすぎると逆に解像度が下がる“解析現象”と呼ばれる事象がありますが、今回はあえて無視して結果のみ掲載しています)

イメージ自体は分かりやすいかと思いますが、いざ言葉に置き換えると非常に多彩な表現方法があるため少々混乱しやすいかと思います。
最初に

被写界深度が浅い=f値が小さい=絞りが大きい=ボケやすい(ピントの合う範囲が狭い)

・被写界深度が深い=f値が大きい=絞りが小さい=ボケにくい(ピントの合う範囲が広い)

といった感じで覚えていってもらえれば大丈夫です。

またオールドレンズには“被写界深度目盛”というものが鏡胴部に刻まれており、大体ですがピントの合う範囲が視覚的に確認できるようになっています。
例えば、絞り値を8にセットした場合、鏡胴の“8と8に挟まれた範囲”がピントの合う範囲として把握することが出来ます。

目盛を読み解くと、f8の場合に「約2m~3mの間」がピントの合う範囲ということになります。

※ちなみに、レンズの特性として“広角レンズほど被写界深度が深くなりやすく、望遠レンズほど被写界深度が浅くなりやすい”という特徴があります。
また、被写体への距離感などでもボケ感などは多少変わります。
被写体との距離が近いほど被写界深度が浅くなりやすく、距離が遠いほど深くなります。遠景ほどピントが合いやすいのはこのためですね。
この特性を踏まえてレンズ選びをしていただくと理想の1本に出会えるかなと思います。

用途に合わせて数本の焦点別レンズを持っておくと非常に便利ですが、いわゆる“レンズ沼”にどっぷりと沈まぬようくれぐれもご注意ください。