銀幕の小さな部屋 14巻目「it/イット」

厳しい寒さが続きますね。今回のご紹介作品は、ホラー小説の帝王スティーブン・キング原作の大ヒット作「it」です。
最近ではリメイクされた方が有名ですが、今回は1990年にテレビ放映された作品です。

映画「it/イット」より

【あらすじ】
1990年、寂れた田舎町デリー。この街の図書館で働くマイクは市内で起きた児童殺害事件に立ち会い、27年前の出来事を思い出す。自身が幼少期にともに道化師に立ち向かった「弱虫クラブ」に招集をかける…。

映画「it/イット」より

なかなか見る機会が無かった一本です。ホラーが苦手な担当にとってパッケージの不気味さで躊躇してしまったのと、かなりの長尺(187分!)だったのが理由ですが、最新版を見る前にオリジナルを観ておこうと本腰を入れてみました。
結果的に最新版ももはやレンタルが出てしまいましたが、長尺のおかげか人間ドラマが濃縮されて非常に見応えがありました。
特に色々なトラウマを抱える少年たちの成長がリアルに感じられ、ついつい応援してしまいました。
ホラー版「スタンド・バイ・ミー」と言われることもあるようですが納得です。

その主人公格の少年少女グループ「弱虫クラブ」の一人、マイクが持っているカメラです。

映画「it/イット」より

大きなアルバムを抱えながら肩からたすき掛けに革のカメラケースを下げていますね。ノスタルジックな1960年代の街並みにとても素敵ですね。
このしばらく後、撮影シーンが出てきます。

映画「it/イット」より

はい、出ました!今日のカメラです。スプリングカメラですね。ファインダーは覗き窓が一つで目測式カメラ、展開部が正方形なので6×6の中判カメラのようです。

ボディの大部分は革ケースに隠れてしまっていますが、おそらく“アグファ ”のイゾレッテIIでは無いでしょうか。
アニリン染料株式会社のイニシャルをとって“Agfa”としたこの会社はもともとフィルムメーカーでしたが、のちにミュンヘンにカメラ製造部門を作りました。最初の蛇腹カメラが1928年との事なのでかなりの老舗ですね。
しかし高級機というわけでは無かったそうで、大衆機として愛されたようです。
同業社との合併やカメラ事業からの撤退など波乱を経て、現在はドイツや日本、イタリアなどのメーカーがアグファフォトブランドでフィルムをOEM生産しているとのことです。(ここら辺はかなり複雑で、簡単にまとめてしまいました。)

2001年にダイソーに24枚撮りフィルムを供給していたこともあるみたいですね。個人的には、もう一度企画していただきたいのですがいかがでしょう…。
ちなみに、日本を代表する映画監督“小津安二郎”さんも自身の作品に(1958年のカラー作品「彼岸花」以降)アグファカラーを使用していたみたいです。

さて、今回のイゾレッテIIは1950年に発売された中判カメラです。フォーマットは6×6なので、ハッセルブラッドやローライフレックス等と同じ正方形ですね。
約10年ほど販売されていたようで、その間にレンズやシャッターが複数バージョン(例えば、レンズはAgunar85/4.5やApotar75/3.5。シャッターはProntoやCompur-Rapid…といった)があるみたいです。またセルフタイマーや解除可能な二重露出防止機構も備えており、撮影に必要な機能は一通り揃っています。
目測式カメラなので距離感をつかむ練習が必要かもしれませんが、絞り込んで被写界深度を深くすることで失敗は少なくなるかと思います。

スプリングカメラということで蛇腹のコンディションやピントリングのズレなどが確認しづらいカテゴリーなので、購入されるときはなるべく点検・整備された個体をお勧めします。

映画「it/イット」より

作中でも27年という月日はとても長く、あれほど仲の良かった仲間もしばらくはどこかぎこちなく。そんなときに当時の集合写真があると嬉しいですね。
皆様も、大事な仲間との一枚に中判カメラならではの写真はいかがでしょうか。
※今作はピエロ恐怖症になりかねないので、小さなお子様のご鑑賞にはご注意ください。

出典:「it/イット」(1990年)
監督:トミー・リー・ウォレス
出演:ティム・カリー、リチャード・トーマス、アネット・オトゥール…etc