少しずつ秋の涼しい風を肌で感じる季節になりました。
今回は肌がひり付くような熱気漂う南米が舞台の群像劇「シティ・オブ・ゴッド」をご紹介です。
【あらすじ】
1960年代、“神の街”ファヴェーラで暮らす主人公ブスカペ。子供ですら犯罪に手を染める街で強かに生きていた。
ある日、同じ街の少年“リトル・ダイス”が発案したモーテル強盗にブスカペの兄たち3人が乗ってしまったことから彼らの運命が大きく変わっていく…。
麻薬ディーラーやストリートチルドレンの抗争。実際にあった出来事をベースに一人の青年の成長期を波乱万丈に描き切ります。
また、一部以外のキャスティングを全て現地の素人から選んだとのことで、それが独特のリアリティを生んでいます。
主役のブスカペ役にはアレシャンドレ・ホドリゲス。カメラマンになるのが夢の心優しい少年を魅力的に演じます。
乱暴なギャングのボス、“リトル・ゼ”にはレアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラがつとめます。
少年期のブスカペ。決して治安の良い環境とは言えない街で生まれ育ちながら、たくましく成長した好青年です。彼の激動の物語がここから始まります。
指を指している彼が少年“リトル・ダイス”が成長した“リトル・ゼ”です。
劇中のギラついた眼の凶人とは反対に演じたレアンドロは非常に温厚な性格で、暴力を振るう演技では心がとても痛んだそうです。
さて今回の作品からカメラのご紹介ですが、2機種ピックアップです。
リトル・ゼ率いるギャング一派が集合写真を撮ろうとしますが、カメラを一派の誰も使えなかったことから、ブスカペがアジトに呼ばれます。
1台目はこちら。一眼レフですね。ペンタ部に名前が載っていてくれて大変助かります。
こちらのカメラ、1959年発売のレンズシャッター一眼レフ「コダック レチナレフレックスS」ですね。所謂アメリカ・コダックではなく、ドイツ・コダック(旧ナーゲル)が製造しています。
レンズシャッター機ですがレンズ交換が出来、シュナイダーやローデンシュトックの交換レンズ群を楽しむ事が出来ます。
巻上レバーが底部に付いてるのも個性的です。
右手に隠れちゃっていますが、セレン光式の露出計が搭載されています。
シャッター速はB/1〜500で十分な仕様ですね。
中々状態の良い個体が少ない様で、当店でも3年程お見かけしていないです…。
いつかお会いしてみたいです。
続いては、ギャング一味の写真が評価され晴れてカメラマンの仕事に就くことになったブスカペ。先輩カメラマンから渡された一眼レフ。
シャッターボタンが後ろにあるのが特徴的ですね。
はい、とても特徴的な135mmレンズ。化粧板に「Nippon Kogaku」の記載があります。
はい、出ました!ニコンFです!しかも露出計が入っているフォトミックファインダーですね。正面“F”のすぐ左が断崖絶壁なのと、f値表示の仕様からフォトミックFtnであると思いますがいかがでしょう?
シルバーボディにブラックのファインダーを載せているので、元々別の個体同士をニコイチにしたという設定でしょうか?
フォトミックFtnは1968年に発売されたモデルで、ニコンFの最終形態となります。
大きな特徴は、レンズを装着後にf値を連動させるため絞りリングを1往復させる「ガチャガチャ」によってセット出来る様になります。
それまでのモデルが開放f値をいちいち手動セットしなければならなかったのに比べると断然スムーズになりました。
この「ガチャガチャ」はニコンファンの間では盛り上がるネタですね。
劇中の組み合わせでニコンFを再現してみました。
ファインダーは正規のシルバーですが、直線的デザインにフラッグシップとしての重厚感を感じます。
ザ・無骨といった佇まい。RF機のSシリーズの名残りがシャッター位置に感じられますね。
経年により露出計が不安定になっているファインダーが多くなっている気がしますので、フォトミックファインダーをピンポイントでお探しの方はお気をつけてください。
ブラジルといえば、リオのカーニバルや綺麗なビーチで海水浴など華やかな楽しいイメージばかりといったイメージでした(個人的イメージ)が、
果てない抗争、残酷な現実に葛藤する若者の描写に非常に心打たれる作品でした。
命のあり方を改めて考えさせられる本作、是非一度ご覧いただきたいと思います。
出典:「シティ・オブ・ゴッド」(2002年)
監督:フェルナンド・メイレレス
出演:アレシャンドレ・ホドリゲス、レアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラ…etc
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