銀幕の小さな部屋18巻目「殺人魚フライングキラー」

今年も後わずかですね…。そんな師走に似つかわしくないサマーパニックムービー1981年公開の“殺人魚フライングキラー”のご紹介です。

こちらの作品、邦題だと一本の独立した作品に見えますが、原題は「piranha part II」つまり二作目となっています。
ただ、前作の俳優は出演していないようでこの一本だけでも楽しめる作品となっていますのでそこまで心配は無いと思います。

【あらすじ】
カリブに浮かぶリゾートアイランド。そんな華やかな観光地でカップルやダイバーの惨殺事件が起きる。ダイビング講師のアンが調査していった結果、軍が極秘裏に産み出した“空飛ぶピラニア”が原因だと突き止めるが…。

お察しがつく通り、「スパイダーパニック」「シャークネード」などでお馴染みのB級パニックホラーとなっています。
ピラニアが人を襲う映画なのでそれなりにスプラッターな描写が出て来ますが、現代ほどのCG技術も無かった時代、当時の特撮技術を堪能出来ると思います。

キャスト陣も超有名な俳優ばかりでは無いのも逆にリアリティに感じます。
そんな中、主人公の夫役のランス・ヘンリクセン(エイリアンのビショップ役!)がとても良い味を醸し出していました。

映画「殺人魚フライングキラー」より。主人公のアン
映画「殺人魚フライングキラー」より。夫のスティーブ

ですが、1番のビックリポイントはなんといってもこの映画があの巨匠
ジェームズ・キャメロンの初監督作品という事でしょう。
当初は特殊効果を担当する予定だったそうですが撮影直前に監督が解雇、キャメロン氏が急遽監督デビューとなったみたいです。
※その後途中でキャメロン監督も解雇に…。監督として名前が残ってしまい、本人としては残念な作品だったようです。
ちなみに前作の監督は「グレムリン」シリーズを手掛けたジョー・ダンテ監督。中々豪華です。

さあそんな夢のリゾート地。どのようなカメラが登場するのかというと…

映画「殺人魚フライングキラー」より。

80年代バリバリのファッションに身を包んだ女性たち。彼女たちのテーブルにあるカメラは…
全然見えませんね…。
シューが後付けのようなデザインに見えるのと、ペンタ部の貼り革から「ニコマート」系のどれかでしょうか?

参考画像:ニコマートFTn。これに見えるんですが…

続いて、バカンスを満喫中の御婦人が肩からぶら下げている一眼レフ。

映画「殺人魚フライングキラー」より。

こちらはバッチリです。ニコンのフラッグシップ機「ニコンF」ですね。
アイレベルに単焦点レンズを装着しています。

現代でも直線的なフォルムは色あせない魅力を放っています。

続いて、主人公アンが暗い部屋で構えるカメラは…

映画「殺人魚フライングキラー」より。

なんと!こちらも「ニコンF」です!アイレベルで単焦点。(小道具の使い回し?)
カプラーを付けてスピードライトを装備しています。
横に細長い形状で、社外製でしょうか?

最後に水中の捜索でアンが準備しているカメラ。

映画「殺人魚フライングキラー」より。
映画「殺人魚フライングキラー」より。

今では珍しい水中(フィルム)カメラですね!
映像が粗いのと引きのシーンのため確信は無いのですが、レンズ鏡胴が銀色・巻き戻しがクランク式に見えるので、1968年発売の「ニコノスII」では無いかと思います。

いわゆる防滴や生活防水では無い、水中での撮影を目的に製作された目測式カメラです。
元々“ラ スピロテクニーク”社が販売していた「カリプソ」というカメラをニコンが技術提携という形で製造販売、そのままシリーズ化していきました。

以前「ニコノスV」をご紹介しましたが、今回は完全機械式カメラ。電池の必要はありません。
巻き上げレバーと同軸にシャッターダイアルがあります。
シャッター速度はB含めて6種類です。Rはリワインドで使います。
このニコノスIIのユニークなところは巻き上げレバーがシャッターも兼ねているところですね。

巻き上げ前はボディ前面にレバーが突出します。

巻き上げ後。ここからさらにボディ側に押し込むとシャッターが切れます。
アクセサリーシューの前にあるギザギザは物理的なシャッターロックです。

レンズを外した状態で左右のフチにツメを引っ掛けると

このような形で中身が抜けます。この状態でフィルムを装填してボディに戻し、レンズを取り付けるわけですね。
つまりフィルム交換はレンズを都度外す必要があります。難儀です。

令和の今では、防水機能が劣化している個体が増えているとは思いますが、デザインは中々個性的で部屋に飾っていても存在感を放つ愛嬌のあるカメラです。
防水デジタルが幅を利かせるマリンスポーツ界にパッキンを完全換装されたニコノスを投入したらとても目を引きますね。

今回はニコンカメラの大活躍する作品でした。もしかしてスポンサーだったんでしょうか、今度エンドロールを確認してみたいと思います。

【おまけ】
今回の作品の恐怖の空飛ぶピラニアです!
B級テイスト溢れる怪作で、懐かしのあわわなシーンやムフフなシーンが散りばめられていますので、単独でのご鑑賞がオススメではあります…。
監督の手掛けた社会現象にもなった作品「アバター」最新作と比較して楽しむのも一興かもしれませんね。

映画「殺人魚フライングキラー」より。

出典:「殺人魚フライングキラー」 1981年
監督:ジェームズ・キャメロン
出演:トリシア・オニール、ランス・ヘンリクセン…etc