中判フィルム。それは非常に高い解像度と立体感にあふれた世界。
120フィルムという一本のフィルムでも、カメラによって6×4.5、6×6、6×7…とフォーマットが違うのも魅力的です。
今回のカメラは第二次大戦時に米軍が軍用カメラとしても採用していた
コダック「メダリスト」です。
メダリストは1941年に製造されたメイドインU.S.Aの中判カメラです。
フジカGW690よりも小型ながらズッシリとくる金属ボディ、上下像合致式のファインダー。そして何よりブローニーフィルムを最大限活かした6×9の大フォーマットが特徴です。
その重量から「プロ重戦車」の異名もあるようですね。
ザ・無骨と言った風貌。シルバーと黒の2トーンがシブいです。シグネット35と通じるものがある?ドイツコダックとは違う趣です。
サイズ感としてはニコンDfに近いかもしれませんが、グリップが無いのでストラップは推奨です。
上から。横幅が短い分、中々の厚みです。
上部にはカメラ銘が誇らしげに刻印されています。左の円盤はフィルム覚え。右は距離指標です。
このカメラはレンジファインダーカメラですが、定番の二重像合致式では無く上下像合致式を採用しています。
ファインダー根本のレバーは1枚目と多重露出の際に使います。
レンズはコダック上級モデルに搭載されるエクター100/3.5が用意されました。シャッター速はB.1〜1/400秒。
裏蓋は両側とも蝶番でも開きますが、
このように完全に分離させることも可能です。シートフィルム用バックなどがオプションで用意されたようです。
撮影の時は、ここまでレンズを展開させます。使わない時は鏡胴を収納させられます。また、収納時はシャッターロックが働くやさしい仕様。
初代メダリストの特徴といえる、左手部の小さなダイヤル。ピントの微調整ダイヤルだそうですが、そもそもピントリングで操作できてしまうので微妙な存在感…。
今回の試写にはリバーサルフィルムを使用しました。さて、80年前のカメラはどのような写りになるのでしょうか。
少し絞りは浅めに撮影しましたが、とても被写界深度が浅いのか狙ったところ以外はかなりフワッとしています。
こちらはf8程で。銅像から台座までしっかりと合焦しています。
非常に鮮やかな発色です。それでいて国産の中判レンズとは一味違う色合いな感じがいたします。これがエクターの写りなのでしょうか。
中判フィルムだからか、立体感がマシマシに感じます。
夜の一枚。メダリストは少しシャッターストロークが深いので仕上がりを見るまで手ブレの心配をしていましたが、大丈夫そうです。
【まとめ】
誕生当時は自動巻止めにセルフコッキング、距離計付きの中判カメラは珍しく、機能の充実したモデルであったそうです。
が、今は生産されていない620フィルム(120フィルムを代用する手段はあります!)カメラで装填や操作法にクセがあり、現代の感覚では便利快適に使えるカメラでは決してありません。
フィルムの装填から普段の手入れ、そして一枚ずつ撮影。心を通わせながら付き合っていくのが一段と大切なカメラと思います。
しかし、エクターレンズの写りを体感できる中判カメラとしての存在感も感じることができました。
米軍にも採用されたいかにもメカメカしい無骨な中判カメラ。
このワードに惹かれた方は一度触れてみてはいかがでしょう。
camera: Kodak MEDALIST
lens: Ektar 100/3.5
film: fujifilm provia 100(120)